診療内容

●アトピー性皮膚炎とは

かゆみを伴い、良くなったり悪くなったり慢性に経過する湿疹です。
もともとの皮膚のバリア機能異常やアトピー素因(気管支喘息、アレルギー性鼻炎・結膜炎、アトピー性皮膚炎やIgE抗体を産生しやすい素因)が関係するなど、様々な要因が複合的にかかわって発症しています。

・乳児期(2歳未満)
かお、頭に症状が出やすく、乾燥、あかみ、ぶつぶつした丘疹、ひどくなると掻き壊しにより湿潤したかさぶたができることもあります。遅れて、体の擦れやすい部位に拡大していきます。

・幼児期~学童期(2~12歳)
かおの皮疹は減少し、くび、肘、ひざの裏、わきの下、手首、足首にできやすくなります。
乳幼児で発症したケースは10代で自然に良くなることが多いです。

・思春期・成人期
思春期以降はかお,くび,胸,背中など上半身に皮疹が強い傾向がみられるようになり、かおからくびに症状の強い顔面型や,かゆみの強いぶつぶつが体、四肢に多発する痒疹型になる場合もあります。
全身に拡大して紅皮症に至る重症例もあります。

● 治療方法 適切なスキンケアと塗り薬による薬物治療となります。

・ステロイド外用剤
症状に合った強さのステロイド外用剤を使います。(ステロイド外用剤は、強さによって5段階あります。)

・プロトピック軟膏(カルシヌーリン阻害剤)
免疫抑制作用により、アレルギー反応を抑え、皮膚の痒みや赤みなどを改善します。ミディアムクラス以上のステロイド外用剤と同等の有用性があります。

・コレクチム軟膏(ヤヌスキナーゼ(JAK)阻害剤)
ミディアムクラス以上のステロイド外用剤と同等の有用性があります。

・モイゼルト軟膏(ホスホジエステラーゼ4(PDE4)阻害剤)
炎症を引き起こすサイトカインが過剰につくられるのを抑えることで、炎症を抑える薬です。
 ステロイドの維持期に使います。

・非ステロイド系消炎外用剤
 軽い症状に使います。

・保湿剤(クリーム、ローション、スプレーなど)
乾燥を改善し、バリア機能を強化します。

・抗アレルギー剤内服
かゆみを軽減し、掻き壊しを減らします。

・中等症~重症の方   デュピクセント注射、ミチーガ注射

● スキンケアについて

皮膚の老廃物、汗、細菌、治療による外用剤の基材も長く付着すると汚れの1つとなります。
それらがかゆみにつながることがありますので、清潔保持のための入浴やシャワーは必要です。
優しく刺激のない石鹸で、軽く洗って汚れを取り除き、保湿剤でバリア機能を高めておくことが大切です。

● アトピー性皮膚炎の悪化要因

・ハウスダスト(ダニ、カビ、ほこり)、花粉、化学物質(化粧品、金属、消毒液)などのアレルゲンに触れる。(何がアレルゲンとなっているかは、各々で異なります。)

・寝不足やストレスが重なる。

・お風呂に入れない、シャワーを浴びることができず、皮膚の清潔を保つことができないとき。

・乾燥しやすい冬や、汗をかきやすい夏に症状が悪化しやすい。

● ステロイド外用剤について

ステロイド外用剤は、とても有効なお薬ですが、間違った使い方をすると副作用もあります。

ステロイド外用剤の副作用は、皮膚萎縮、潮紅、にきび、ウイルス・真菌・細菌感染を起こしやすくなる、多毛などがあります。漫然と長期間使い続けてしまうことで生じやすくなります。
副作用をできるだけ生じないようにするには、皮疹の重症度に合った強さのステロイド外用剤を選んで短時間で症状を抑える、よくなったら症状に合わせて強さを変える、あるいは保湿剤で維持する、必要ない時は終了することです。

ステロイド外用をつけないと再燃しやすい場合、プロトピック軟膏やコレクチム軟膏に切り替える、または、週2回程度間欠的にステロイド外用剤を使用して(プロアクティブ療法)抑える方法もあります。

外用剤による改善が少ない場合、使用量が少なすぎる、適切に外用していなこともあります。
人差し指の第1関節から指先まで軟膏をしっかり出した量(1FTU)は、大人の手のひら2枚分の面積に塗るのが適量です。

● 治療の目標

アトピー性皮膚炎は、軽症例では、日常生活に支障がなく、薬物治療もあまり必要としない、中等症では、軽い症状があっても、急激に悪化することは少なく、悪化しても、治療により抑えられ、持続しないことが目標です。